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| 『クイーンズブレイド~もう一つの物語~』 エピソード02「隻眼のシャム」 |
| 2009年 12月 14日(月曜日) |
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■エピソード02『隻眼のシャム』 質問:クイーンズブレイドを目指したいのですが、どうすれば良いでしょうか? 回答:あなたが、美闘士としてふさわしい強さと美しさを示すことができれば、自ずとその道は開かれるでしょう。 正義・欲望・仲間・自分自身・自由・権力……、大切なものは人それぞれだ。では、シャムの場合は…… ……なんといっても母さんよね。 母と二人で食事をとる時間、それはシャムにとって、至福の時である。母を見つめつつ、少女の想いは徐々に暴走する。 ……いつもながら、母さんは最高ね。見ていると、なんというか、こう…… 「私の顔に見とれていないで、ちゃんと食べなさい」 「!?」 母は冗談のつもりなのだろうが、図星をつかれたシャムは慌てる。 「食事は落ち着いて」 「ご、ごめん」 謝りながら、シャムは改めて母の顔を見つめなおす。 ……やっぱり綺麗だな。 娘の自分から見ても、そう思う。だが、母の右腕に目をやり、シャムの心は暗くなる。布が巻かれたその腕は動くことがない。 シャムの母はかつて美闘士であった。 ……らしいのよね。母さん昔のこと、あまり話さないから。 それでも、せがんで聞き出したことや、母の昔を知る人々の話などから、シャムはいろいろなことを知った……母が二つ名を称されるほどの実力者だったこと、大金が動く危険な賭け試合に次々と身を投じたこと、その結果、ある試合で右腕に呪いを受けたこと……。 では、なぜそんな危険をおかしてまで、シャムの母は大金を求めたのか? ……私を育てるため、だよね。 もちろん、母はそんなことは一言も口にださない。だが、決して裕福ではないものの、自分が苦労した記憶は一度もない。すべては母のおかげだ。だからシャムは決めたのだ。今度は自分の番だと。 彼女は、母に向かって切り出す。 「母さん、前にも話したけど、私クイーンズブレイドに……」 「やめなさい」 にべもない。 「クイーンズブレイドを勝ち抜けば、きっと母さんの呪いだって……」 「私を心配してくれるのは嬉しいけれど、お前には美闘士は無理よ」 母の言葉とはいえ、シャムは少しムッとする。 「そりゃ、私は、母さんみたいな美人じゃないけれど……」 「お前は綺麗だよ。それは私が一番知ってる」 母の言葉に、今度は顔が赤くなる。 「綺麗だなんて、やだ……母さん……」 「じゃあ、この話は終わりね」 慌てて話を戻す。 「ごまかさないで!」 「お前が綺麗なのは本当だよ」 「やだ……じゃなくて、じゃあ私に何が足りないの?」 「お前、刃物苦手じゃない」 「……」 質問:クイーンズブレイドでは、やっぱり武器を持った人が有利なのでしょうか? 回答:必ずしもそうではありませんが、武器を使う人がほとんどです。まずは、自分にむいた武具を見つけてみてはどうでしょうか。 体力には自信がある。護身術になるからと、無理をいって、武術の基礎は母から学んだ。しかし…… 「武器だけはダメ」 無理をして武器屋に来てみたものの、すでにシャムはくじけていた。 武器屋の主人は、昔の母のファンだったらしく、親身になって相談にのってくれたが、結果として、自分の武器嫌いを再確認するだけであった。 ……特に刃のついた武器は苦手だ。 目の前に置かれた大剣を見ながら、シャムは思う。 ……こんな剣を人に振るったり、振るわれたりするなんて…… 考えただけで震えがくる。そんなことで震えがくる自分も情けない。シャムは思わず愚痴をもらしていた。 「武器嫌いが治る道具があればいいのに」 「あるよ」 武器屋主人の思わぬ返事。ポカンとしたシャムの前に、彼は店の奥からは一つの眼帯をもちだしてきた。 「一種の魔導具でね。剣の扱いがうまくなるらしい」 「そんな適当な……」 半信半疑ながら、眼帯を着けてみる。 ……着け心地は悪くないな。 シャムは鏡を見る。自分ではない自分がそこにいた。なんとなく強そうだ。 ……いや、私は強い。 大剣を握る。「こんなものが怖かったなんて」 シャムは、軽々と剣を振るった。武器屋の顔が青ざめるが、気にはしない。 「これ、もらってくよ」 ひとしきり人を怯えさせた後、意気揚々として、シャムは去っていった。それを見送った主人は吐息をつく。 「思い込みってすごいな」 そんなつぶやきはつゆ知らず、シャムは進む。 ……そうだ、ヴァンス伯領の方へ行ってみよう。あそこならば、戦う相手には苦労しないはず。いずれは、伯爵の娘たちとも…… 戦いへの期待に胸踊らせるシャム。 「今夜は、母さんと初勝利のお祝いよ!」 質問:先日、すごい武具を手に入れることができました。これでクイーンズブレイドもバッチリですね! 回答:現実は、甘くありません。 ![]() 「隻眼のシャム」――完 ■次回予告 “流浪の戦士”(予定)と“隻眼の斬鬼”(自称)の邂逅……それは、クイーンズブレイドに何をもたらすのか?(もたらさないのか) 次回『シャムとレイナと愛玩獣』 ■ストーリー原案:土産物屋ハンス ■イラスト:れっどらーく、鈴眼 依縫 ■テキスト:十之三乗 |

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