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『クイーンズブレイドリベリオン』イラストストーリー~決戦編~第6話
2012年 2月 16日(木曜日)

第6話


第六話『黒幕』

女王クローデットが率いる正規軍と騎士姫アンネロッテのもとに集った叛乱軍との戦いは終わりを迎えようとしていた。
アンネロッテは前女王アルドラと奇跡的な姉妹の再会を果たし、ユイットは巨人化したライラを半ば相打ちとなりながらもブライの力業でねじ伏せることに成功した。残る戦いは、叛乱軍の美闘士逹と女王クローデットの対決のみ。
はたしてどちらが勝ち残るのか……。




かつてクイーンズブレイドに挑んだときと比べまったく衰えることのない女王クローデットの雷撃によってシギィとルナルナは一撃で行動不能に追い込まれてしまった。
「だ、誰か、助けてぇー」
ただ一人の残されたミリムの声に答えるように、一筋の光が彼女とクローデットの間を眩く照らす。
「何奴!」
クローデットの問いに応じるように、ユーミル、ターニャン、サイニャンを連れた仮面の美闘士が姿を現す。
「マ、マリアさぁん……」
「ミリム、それにアンネロッテの妹達、よく頑張ったわ」
クローデットが視線をミリムから仮面の美闘士に移す。
「ミリム……超振動装備を! 貴女の武器なら、女王クローデットを倒せます!」
「え、ええ?」
「いいから、言う通りにするのじゃ!」
マリアの背後から聞こえてきたユーミルの剣幕に押され、ミリムは全ての超振動クリスタルを起動させた。
「ひゃああっ……ダ、ダメですぅ……つよすぎて、身体がもちま……ああんっ」
喘ぎながら頬を染めるミリムの姿に、女王クローデットは眉を顰めた。
「醜悪な見世物だな……終わりにしてやる」
サンダークラップが紫電を発する。
「きゃ、きゃあっ、ビリビリ、だめぇ!」
多くの美闘士を一撃で行動不能に追い込んだ雷撃は意外にもミリムの身体をしびれさせることもないままに、鎧の上を滑り床に落ちていく。
「なに? 雷撃が効かぬだと?」
不可解な現象に目を丸くするクローデット。
「予想通りじゃ、限界まで高められた超振動クリスタルの放つ振動波が、雷撃をも寄せ付けない防御壁を形成しておる。今じゃ、ミリム!」
「は、はいいいっ! イキます! いっちゃいますぅ!」
ミリムが叫びながら剣を振るう。彼女が繰り出した剣技にその場に居合わせた美闘士たちは思わず目を見張った。
大陸最強の美闘士たるクローデットを前に一歩も引かぬ見事な太刀筋がサンダークラップを弾き飛ばす。
「超振動剣……使いこなせるようになっていたとはな……」
胸元を大きく切られ、露となった乳房を隠すことなく、女王クローデットは膝を屈した。
「え、あ……あたしが女王さまを?」
自分が成し遂げたことを理解できないといった表情を浮かべ戸惑うミリム。
「見事じゃ! 叛乱軍の一員として数多の実戦をくぐり抜けたことで秘められた才能が開花したのじゃろう。そうでなければ超振動剣を使いこなせるはずがない」
「正道を誤った女王を倒すのは庶民の仕事……頑張ったわね、ミリム……これで……」
微笑みを浮かべながらマリアは深い眠りに落ちていった。


大戦は終わりを迎えつつあった。
アンネロッテとアルドラの和解により、女王軍と叛乱軍はお互いに鉾を向けるべき相手を失ってしまったのだ。
ライラの渾身の一撃を受けたブライは女王の城に食い込んだまま機能を停止。しばらくは使い物にならない。
ユイットはヴァンテと共にブライを降り、戦闘中に聞こえた声の主、ライラを操っていた存在を探していた。
「ヴァンテ、捜し物は見つかった?」
「ガオ……」
ヴァンテの視線の先、全裸で倒れているライラの傍らでピンク色の物体が蠢いているのが見える。
「やっぱり……これを用意しておいて正解だったね」
ヴァンテの腕に付けられた装置が、霧状の薬剤を噴霧する。
「ぐえっ! 何これ! 染みるなぁ……」
文句を口にしながら、ピンク色の塊がその姿をドレス姿の妖艶な美女へと変化させていく。
「あれ? 変われない? なんなの? ボク、こんなの初めてだよ」
途中で止まった変化に、美女が戸惑いの声を上げる。
「流石は天才錬金術師ユイット。ぶっつけ本番だったけど上手くいったみたいだわ」
「自分で言うかなぁ……って、変身できない……これって本気で危機なんじゃないの?」
「やっとわかった? お兄ちゃんが前にやられたって聞いてたからメローナ対策として準備しておいたのよ。まさかご本人にお会いできるとは思ってなかったけど。さあ、洗いざらい喋ってもらうわよ。沼地の魔女が何を企んでいるのかをね」
「ボクが素直にしゃべると思う?」
「すでに失敗した計画の秘密を守って彫像になるのと、話して楽になるのとどっちが良いか……考えればわかるよね~」




女王クローデットの敗北をもって、女王の都での戦いは終わりを迎えた。
アルドラを伴い女王の間に到着したアンネロッテを待っていたのは、武装解除を受け入れ、玉座から降りた女王クローデットと、深い眠りに落ちているマリア、そして戦いの傷から立ち直りはじめた仲間たちの姿だった。
「アンネロッテ、おぬし達の勝ちだ。勝利の印に正道を見失い、大陸に惨禍を巻き起こした愚かな女王の首を持っていくが良い……」
「そのつもりはありません……女王クローデット」
アンネロッテはクローデットが差し出した剣を受取りながらも、彼女の願いを拒絶した。
「私たちの目的は、女王に間違いを認めてもらうこと。女王を殺すことではないのです」
「それでは償いにならぬ。私が犯したのは、我が一命をもってしても、購うことの出来ない大きな罪だ」
クローデットの言葉にアンネロッテは目を軽く伏せた。ヴァンス伯爵領、クロイツ辺境伯領、ワシリカ村……クローデットの圧政により被害を受けた人々のことを思えば、彼女が求める処罰は重いということはない。
「全ては己の心が招いたこと。あの時、沼地の魔女にかけられた“呪い”はきっかけに過ぎない。心弱き者が女王の座についたことが全ての間違いの始まり……さあ、我を処断するが良い。アンネロッテ、お前にはその権利と義務がある」
「権利と義務……」
アンネロッテは剣に手をかけたまま、口を閉じた。
「はーい、そこまでー」
緊迫した空気を溶け崩すようにユイットの声が響く。
「女王クローデットが全部の咎を受ける必要はないんじゃないかな? だって、物事を悪い方向へと誘導する黒幕がいたんだからさ」
「黒幕ぅ?」
ドスンと音を立ててユイットと一緒に現れたヴァンテが背負っていた金属製の檻を床に降ろす。
「はぁい! 叛乱軍に、女王サマをはじめとする呪われちゃった美闘士さん逹、ボクの名前は千変の謀略者メローナ」
檻の中に閉じ込められた女性が状況にそぐわない元気な声で名乗りを上げる。
「そいつじゃーッ! そいつがワシに化けてやりたい放題をしておったのじゃー!」
ユーミルが今にも檻を壊しそうな勢いで声を荒らげる。
「これで役者はそろったみたいね。それじゃあ、なぜ女王クローデットが正道を見失ったのか、沼地の魔女が何を企んでいるのかを話してもらうね」
ユイットは皆を軽く一望し、檻に視線を向けた。
「まあ、ボクを捕まえたご褒美にいくつかの答えを教えてあげようか。君たちはクローデットの失政とか悪政って呼んでるけどさ、全部が全部悪いわけじゃないってことはわかっているよね」
ニヤリとメローナは笑みを浮かべた。八年にもおよぶアルドラの治世の影で、女王派の貴族たちは多いに至福を肥やし、役人は腐敗しきってしまっていた。クローデットはそれらの悪しき慣例を全て破壊し、家柄や金銭によらぬ実力社会を形成しようとしていたのだ。
「すべては魔女がクローデットにかけた"増幅の呪い"のせいなんだ。クローデットの元々の真面目さや厳格さ、人一倍秩序を重んじる性格を増幅させてやるだけで、こういう風になっちゃうのはわかっていたのさ。ボクは途中で女王が心変わりしないように、側にいてささやき続けたわけさ……後は自分で決めた規範を厳格に守って失敗を重ねていくのを見守ればいい……」
メローナの言葉にクローデットが唇を噛む。
「こうしてクローデットを操り人形にして大陸の邪魔者を合法的に排除していき、後にその場を乗っ取る魔女のために都合のよい世界に変えていったわけ。でもそれでも何人か思い通りにならない邪魔者はいた。そこで予言によって危険とみなした美闘士たちに呪いをかけていったわけ……」
「それが魔女の筋書き……。その予言とやらもお兄ちゃんの存在まではわからなかったのかしら」
「さあね。さ、約束通り全部話したからさ、ボクを自由にしてくれないかな? 天才錬金術師さん」
「ん~~、約束は守ったよ。メローナは自由に姿を変えられるはずだよ? ただ、檻からは出られないけど」
ユイットは自慢げに微笑む。檻の内側にはメローナの変化を封じるために噴霧した液体と同じ成分の軟膏が塗られているため、彼女は檻から出ることは出来ないのだ。
「どうやら、沼地の魔女を倒さない限り、この大陸に平穏が訪れることはないようだ」
アンネロッテは手にした剣をクローデットに戻し、女王の間に集まった仲間たちに目を向けた。
「私は女王クローデットを操り、大陸に惨禍を持たらした沼地の魔女を討伐したい。皆の力をもう少しだけ貸してくれ」
「もちろんですわ。私たちは姉妹ですもの」
アルドラをはじめ、アンネロッテを姉と慕い集まった同志たちが嬉しそうに微笑む。
「私に屈辱の中で生きろと……」
「じょ、女王様は厳格ですが、優しいお方だったことを私は知っています。沼地の魔女さえ居なければ、きちんとできたはずですッ!」
ミリムがクローデットの手を取り断言する。
「出来るだろうか……私に」
「出来ます。貴女は一人ではない。私たちも共に!」
アンネロッテの言葉にクローデットは目を伏せた。




女王クローデットの背後に潜み、大陸を蝕む『沼地の魔女』恐るべき謀略の影で蓄えた魔力が牙を剥く。
次回! 『挑戦』 大陸の未来のために美闘士は戦う!

ストーリーテキスト:沖田栄次、イラスト:えぃわ


 
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