ざっぱあ~ん!
数メートルを落ちたはずだが、下が水だったおかげでアンネロッテもミリムも大した怪我はなかった。
ただの水? いや、違う。
「あ……熱いっ!」
慌てて飛び上がるアンネロッテ。もうもうと湯気がその顔にまとわりつき、1メートル先すら良く見えない。彼女たちが落ちたのは水ではなく、熱湯の中だったのだ。
「だ、大丈夫ですか、アンネロッテお姉様!」
超振動鎧のおかげでまったく無傷のミリムが、アンネロッテを案じて声をかける。アンネロッテは素早く全身に意識を渡らせて、どこも怪我などしていないことを確認すると、ミリムへと頷いた。
「だ、大丈夫だ……それよりも、こ、ここは、一体……」
アンネロッテの呟きに答えるように、ミリムが崩した壁からさあっと吹き込んだ風が、彼女たちを覆っていた湯気を吹き飛ばす。
「な、なんっ……!」
「きゃ……!」
絶句するアンネロッテ。思わず目を覆うミリム。
二人の周りには、一糸まとわぬ姿の娘たちが、ぽかんとした顔で立ちつくして二人を見つめていたのであった。
かぽ~ん。
どこかからそんな音までが響く。
「お……お風呂……?」
ようやく自分たちがどこにいるのか把握したミリムが、声を震わせて呟いた。
衛兵たちのための大浴場。
恐らくは、そんな場所なのだろう。
「しっ……」
全裸の娘たちの一人が、呆然と呟く。
「し……?」
思わず聞き返してしまうミリム。
「し……侵入者ああ~っ!」
何も着ていない、装備していないとはいえ、彼女たちも衛兵の一員。
叫び声で我に返ると、アンネロッテたちを捕縛するべく取り囲む。
「お、お姉様っ……!」
「慌てるな、相手はみんな丸腰……なんとかして突破するっ!」
「は、はいっ!」
お互いを守るように背中を合わせて、ミリムとアンネロッテはそれぞれの武器を構えるのだった。
はたしてアンネロッテとミリム、そしてマリアはリスティを救出することができるのだろうか?
それは、戦ってみなければわからない。
- つづく -
ストーリーテキスト:松智洋、イラスト:えぃわ