「なるほど……確かに、アンネロッテという者は魔神の血を受け継いだ人間……魔人のようですわね」
クローデットが語る、アンネロッテとの戦いの物語を聞き終えたシギィは、ひとつ頷いてそう言った。
クローデットが王位に就いたのちに行った貴族制の廃止。それに抗って取り潰された、クロイツ辺境伯の遺児である、アンネロッテ。
王軍に叛逆したかどで追われるさなか、彼女は追いつめられ、そして体内に眠っていた魔人の血を覚醒させた。
常識を遙かに超えた力と、血を渇望する残忍さを併せ持った、“魔人”アンネロッテに、それまで優勢を保ち、追いつめていたはずの近衛軍は壊滅。
“牙を統べる者”エリナ、“超振動戦乙女”ミリム、王軍の誇る二大戦力を打ち倒し、“鋼鉄参謀”ユーミルに撤退を余儀なくさせたその力は、確かに人間のものとは思えなかった。
「しかし……今ここで聞いた話だけで、彼女を魔人だと決めつけ、断罪するわけにはいきませんわね」
シギィが何かを言おうとしたユーミルを視線で制して続ける。
「ですから……判りました。わたしが自らの目で、“叛乱の騎士姫”アンネロッテの正体を見極めに参りましょう」
そっと目を閉じ、神に伺いを立てるように唇を結ぶシギィ。
一瞬の瞑想を終えて再び開かれた瞳には、確かな決意の光が宿っていた。
「もしも、アンネロッテが魔人であるならば……異端審問官として、彼女を裁かなくてはなりません」
そして……忘れてはいけませんよ、“雷雲の女王”クローデット。
心の中、シギィは付け加える。
あなたが、あなたの部下たちが使う錬金のわざ……それだって神に背いた異端の技術だということを、わたしは忘れていませんよ。
あなた方の敵が、わたしの敵であるかどうか……それはまだ判りませんが、あなた方は確かに、わたしの味方ではないのです。
そのことを……忘れてはいけませんよ。
- つづく -
ストーリーテキスト:松智洋、イラスト:えぃわ